「窓」とは?二階さんならではの視点でさまざまなジャンルから「窓」を語ります。
二階さちえ(ふたはしさちえ)プロフィール
記者・編集者。(同)青空編集事務所代表。住宅・建築・まちづくりをテーマにウェブサイトや雑誌、書籍向け企画取材執筆・編集を行う。板硝子協会エコガラスHP取材記者、千葉市まちづくり冊子『やさしい流れに会いにゆく』取材執筆・編集・デザイン、神奈川大学建築学科発行誌『RAKU』特集ページ編集統括。近著に『世界5000年の名建築』『東京老舗の名建築』(共にエクスナレッジ刊)、『中銀カプセルスタイル』(草思社刊)取材執筆。 千葉大学大学院修士課程修了、工学修士 神奈川大学建築学部非常勤講師
二階さん取材記事⇒エコガラス事例紹介
コラム一覧
窓を飾る“鉄の芸術” ロートアイアン
2026-03-04
[窓]
注目NEW

ロートアイアンは手仕事が原則で、熱して柔らかくした鉄を職人がハンマーで打ち、自由自在にかたちづくっていきます。
住宅や建築のファサードをデザイン・装飾し、アートとしての評価も受け、さらには開口部の防犯をも担うものです。
日本語では鍛鉄(たんてつ)あるいは錬鉄(れんてつ)と表現され、近年ではより広い普及をめざし、アルミ素材を使ったりデザインカタログがつくられたりもしています。
けれどここでは、純度の高い鉄からプロが打ち出す一品もの=本来のロートアイアンと西欧世界の窓・開口部の関係をお話ししましょう。
この“鉄の芸術”のルーツは中世ヨーロッパに遡ります。10世紀以前から数百年にわたって絶対的な権力を誇ったキリスト教の教会建築が、深く関わっているのです。
パリのノートル・ダム大聖堂は2019年の火事で消失、近年修復なって、日本でもつとに有名になりました。この教会に代表されるのが“ゴシック様式の教会建築”です。
12世紀頃に登場するゴシック教会はヨーロッパの伝統建築を代表する存在で、今も多くの街や村のシンボルとして君臨しています。天をつく尖塔や華やかなステンドグラスに誰もが眼を奪われ、もちろん観光スポットとしても一級品。
石を積んで造ったように見えますが、実はさまざまな部分を鉄で補強することで、その威容が支えられている建築です。

サント・シャペル礼拝堂の内部 ©️ CC BY-SA 3.0
同じくパリに建つ礼拝堂『サント・シャペル』は“ゴシックの宝石箱”と称えられる美しさ。細い鉄材を使った鳥籠のように繊細な構造におびただしいステンドグラスをはめ込み、内部は幻想的な光で満ちています。
石の皮をかぶった鉄の建築でなければ、実現できないデザインでしょう。

バチカンのサン・ピエトロ大聖堂内部。ルネッサンス期~バロック期教会建築の粋を集めている
続くルネッサンスやバロック時代の教会ではそれがエスカレートし、内装から開口部まで鉄やガラスを使いまくって、この世のものとは思えぬ光輝く空間が創出されます。
“これぞ神の国”たる圧倒的かつ華麗な演出で民衆の心をつかみ、熱狂させて支配したのでした。
こうして鉄は欧州の建築文化に浸透していきます。さらに19世紀末に起こったふたつの出来事でロートアイアンの存在が確立しました。
芸術運動『アーツ&クラフツ』と『アール・ヌーヴォー』です。

ウィリアム・モリスによるアーツ&クラフツのカーペットデザイン ©️ PKM
アーツ&クラフツは、産業革命にともなう急速な工業化に疑問と危機感を持った英国人ウィリアム・モリスらが起こした運動です。
当時、社会にあふれた粗悪な工業製品を憂い「伝統的な職人の手仕事と人間らしさを大切にしよう」と、植物をモチーフとする有機的なテキスタイルや温かみある家具、アクセサリーなどを職人たちと共に制作・販売していきました。
その柔らかな意匠は『ウィリアム・モリスデザイン』として、現在も生地・カーテン・壁紙など多くのファブリックで愛されています。
そしてアール・ヌーヴォーは、アーツ&クラフツのこの思想をよりどころに花ひらいた19世紀末の特異な芸術運動。
とりわけ産業革命で豊かになった都市住民の住まいや、彼らの仕事に付随する店舗や事務所などを個性的にデザインした“アール・ヌーヴォー建築”が有名です。

フランス・ナンシーの商工会議所ファサード ©️ Berthold Werner

パリの住宅 ©️ VVVCFFrance

ナンシーの美術館 ©️ dalbera
アール・ヌーヴォー建築家たちは鉄とガラスを存分に使い、街路に並ぶ住宅・店舗・オフィスのファサードから窓やバルコニーの手すり、階段にいたるまで、自由に伸びる植物の蔓や花々を思わせる優美な曲線や円、複雑な幾何学模様で徹底的に装飾しました。
ロートアイアンならではの自在さが際立つそのデザインは、ときに退廃感すら感じさせる妖しい美しさに満ちています。
公共性の高い教会ではなく個人住宅や民間建築が舞台だったことで、施主の思いをそのまま表現しダイナミックな奔放さを生み出し得たのもアール・ヌーヴォー建築の特徴。
西欧のロートアイアン文化はここで日常に根づいたといえるでしょう。現代までそれは引き継がれ、街並みや都市風景をも形成しています。
さらに開口部では“美しくて効果ある防犯設備”として窓格子や門扉などに採用され、人々を守っています。ヨーロッパは窓を破っての窃盗や強盗犯罪が多く、開口部の防犯意識は日本と比べてとても高いのです。
…ここでわたしたちの国の建築文化やデザインを振り返ると、疑問が湧いてきませんか。ファサードも窓も、装飾的な要素がなんだかとても少ないような…?
次回はこの不思議について、考えていきましょう。

パリのアール・ヌーヴォー建築を代表するアパルトマン『カステル・ベランジェ』の見事なロートアイアン
参考文献:
西川雅嗣編『建築史 西洋の建築』京都造形芸術大学
橋本文隆『アール・ヌーヴォー建築』河出書房新社
加藤耕一『西洋建築史に見る鉄のテクトニクス』10+1ウェブサイト
ユーロスタイル『ロートアイアンの歴史と文化』ユーロスタイルウェブサイト
レッキーメタルオーナメントジャパン『ロートアイアン(鍛鉄)とは』レッキーメタルオーナメントジャパンウェブサイト
光で、景色で、心と体に働きかける窓
2025-12-23
[窓]
注目
風景を眺め、新鮮な空気を取り入れ、日差しで室内を明るくする… 窓は健康で快適な暮らしの必需品です。
それだけではありません。わたしたちの“心”に窓が関わる場面もまた、少なくないといいます。
住まいで、仕事場で、人の気持ちにひそかに? 働きかける窓については多くの研究がなされ、現在も続けられています。
そのいくつかをちょっぴり、のぞいてみましょう。
まずは窓が室内に取り入れる自然の光のお話から。
リビングの大きな窓は“良い気分”の源泉のひとつです。開放感やお部屋の広がり感のほか、自然光がたっぷり入ることで体にも心にもいいことがたくさんあります。
古代ローマの人々も自然光を大事にしました。中庭を囲んで部屋を並べ、それぞれの窓から光を取り込んだ住宅の遺跡がいくつも残っています。
光と人の心身の関連でよく知られているのが“体内時計の調整”でしょう。
ホルモンバランスに関係している生活リズム『サーカディアンリズム』が“明と暗のサイクル”に影響されるからです。
自然光で明るい昼間は交感神経が優位になり、人は活発に動き回る。日が落ちて暗くなれば今度は副交感神経が優位になってゆっくりしたくなり、やがて眠りにつく…といった具合です。
自然のサイクルに素直に従うこんな暮らし方こそ、健康の秘訣かもしれませんね。
昼間の強い自然光は心にも体にも元気をくれる
このサイクルが乱れると眠気や頭痛、食欲不振などさまざまな不調が現れてきます。
さらに昼の力強い光を浴びる時間が少ないと“幸せホルモン”の別名をもつ脳内神経物質『セロトニン』の分泌が減って、落ち込みや不安が増大します。日差しの弱くなる冬が長い北欧に多く見られる『冬季鬱』もこれが一因となっているそう。
日中、ある程度の時間をリビングなど決まった部屋で過ごす方は、窓からの自然光をいかに浴びるかを少し意識してみるといいかもしれません。
大きな窓があればその活用はもちろん、ほどほどのサイズであっても窓から1mくらいの位置に居ると、自然光がサーカディアンリズムをよく調整してくれる、との見方もあります。
最近は自然に近い光の照明器具も開発されていますが、まずは今ある窓を十二分に活用したいですね。
デザインされた3つの窓があるリビング
室内の開放感と窓の関係について、窓の大きさではなく配置に着目した調査実験があります。
「部屋のどこに窓があるかで広さが違ってくる」。言い換えれば、どの視点から窓が目に入るかで空間の開放感が違ってくるというのです。
イメージしてみましょう。扉を開けてあなたは室内に入ります。大きさが同じ窓が①正面の壁にある②左右の壁にある③天窓になっている としたら、もっとも開放感を感じる部屋はどれだと思いますか?
実験では①②③の順で開放感が大きいとの結果が出ました。
一見、当たり前のような気もしますが、ここに表されているのは“窓が視点の先にあることの効果”。広さが同じでも、人の視点からまっすぐの位置に窓がある部屋は開放感がより感じられるというのです。
サイズはほどほどでも正面にある窓は、視点から外れた大きめの窓よりも部屋の広さを演出してくれる。そう言い換えることもできます。
同様に青い空や流れる雲、夜になれば月や星も見えて開放感いっぱいに思える天窓も、視線の先になりにくいことで、ここでは第3位に甘んじました。
ただし自然光を室内に取り込む面では、天窓が圧倒的です。その力は壁にある窓のなんと3倍! 部屋の明るさに大きく貢献してくれます。
ワークスペースを設えた横長の窓辺。仕事もはかどりそう?
現実には、窓の位置の変更は自宅の新築や大きな改修を計画中の人以外、なかなか難しいですよね。
例えば室内の模様替えなど家具の配置を変える機会に、お気に入りの椅子やソファ、書き物などでよく使うテーブルを窓の近くに置き直してみたり、窓の前でなんとなく視線を遮っていそうなモノを、ちょっと整理してみてはどうでしょう。
小さいけれど、楽しい試みになりそうです。
窓から見える景色と人の心に関する研究も複数あります。
ある研究では、景色を構成する要素を空/地面/建物壁面/建物開口部/緑 の5つに分けました。これらの景色が目に入る住宅の窓が、住む人にどう働きかけているのか…気になるところです。
一戸建か集合住宅か、あるいはマンションの高層・中層階といった住宅タイプによっても変わります。
同じような近隣の建物でも、平屋の窓から見るのとタワマン高層階の窓からとでは見え方感じ方が違うのは、想像に難くありません。
さまざまなパラメーターで調査研究は進められています。研究成果をいくつかご紹介しましょう。
前述した5つの要素のうち、戸建住宅でも集合住宅でも総合的に住まい手の評価が高いのはやはり“緑の量が多い景色”です。植栽や緑地の眺めが人の心に訴えかける力がうかがわれる結果ですね。
緑のほかに“空が見えること”の影響力を示す興味深い研究結果もありました。
前面にあるのが同じ建物でも、そこで空が目に入るかどうかで景色の印象は大きく変わってくるというのです。
空が見えるとは“視界を遮られず目の前がひらけている状態”で、この要素があると景色の評価が高くなります。邪魔なものがなく目の前を気持ちよく見通せることは、やはり誰にとっても気分が良いものなのでしょう。
窓の内側から空が見えるには、相対する建物からは適当な距離が必要です。つまり近隣の住宅や建築物と自分の住まいが“どの程度の間隔で建っているか”が映し出されるというわけです。
密度の高い戸建住宅地はもちろん、集合住宅であっても住棟間隔を狭くして密に建てられている場合、同様のことが起こり得ます。住宅地の計画を行う専門家にとっても、重要な研究といえそうです。
吹き抜けのある住宅。1階の窓は隣家の壁面のみ、2階の窓では空が見えている
景色そのもの以外に、より遠くまで見えたり自然光が多く感じられるといった要素を備えた窓も、住宅のタイプに関わらず基本的に好評です。
ただし高層の集合住宅などでは「あまり見たくないものも見えてしまう」と“見えすぎること”への嫌悪が見られることもあるといいます。眺望こそ最大の魅力と思えるタワーマンションも、少し掘り下げればコトはそう単純ではないのかもしれません。
窓と心の関わりに関する研究や調査、論考はほかにもたくさんあります。『窓のコラム』ではこれからも折にふれて興味深いトピックをご紹介していきます。お楽しみに!
参考文献:
Rahmawati Hidayah、大井尚行、高橋浩伸:窓と視点の位置が室内開放感に及ぼす影響 模型実験による開放感に関する研究、日本建築学会大会学術講演梗概集 2011年8月
日野真理子、水田和孝、大井尚行:窓形状(縦長窓)が室内開放感に及ぼす影響 模型による開放感に関する実験研究、日本建築学会大会学術講演梗概集 2001年9月
荒野華織、松田啓汰、樺木隆則、大江由起、加藤未佳、佐野奈緒子、宗方淳、吉澤望:住宅の居間における窓を含む視環境の評価構造の解明、日本建築学会環境系論文集 第89巻 第818号 2024年4月
荒川望実、宗像淳:住宅タイプの違いから見る窓眺望が居住者の主観的幸福に与える影響、日本建築学会環境系論文集 第89巻 第822号 2024年8月 他
ガラスのない窓
2025-09-19
[窓]
注目
今回は“ガラスがはまっていない窓”のお話です。
西欧世界の窓(window)の語源が“風の目”(wind-eye)である、との説はよく広く知られています。
石の壁でできた建物に風や光を得ようと穴を開けたのが窓の始まりで、そこにガラスがはめられ私たちがよく知る“窓”になるまで、人は長い時間をかけてきました。
世界最古といわれるガラス窓は、古代ローマ都市ポンペイの浴場跡で発見されました。
分厚くて不透明なガラスがはまっていましたが、当時のガラスは大変な贅沢品。庶民の手に届くものではなかったといいます。薄く透明でなめらかな板ガラスの窓など想像するのも難しかったでしょう。
小さな穴からわずかな光を取り込む暗い家に暮らしながら、人々は「窓にはめて光をたくさん通すナニカ」がどこかにないだろうか? あかりが採れる窓のある建物をつくりたいと願い続けました。そしてさまざまな材料を発見しては加工し、窓枠にはめていったのです。
動物の皮も使われました。
聖書をはじめ、無数の小説や歴史書に出てくる“羊皮紙”で、これはパピルスと並んで紀元前のエジプトが生み出した、文明最初期の紙のひとつです。
羊や子牛の皮を原料とし、本や楽譜の筆記・記録に多く使われましたが、薄く半透明でよく光を通し、しかもとても丈夫だったので中世ヨーロッパの住宅の窓にも利用されました。

ガッラ・プラキディア霊廟の大理石窓と壁画群 ©️ HIro-o
石を張った窓もあります。
5世紀半ばのイタリア・ラヴェンナで建てられた霊廟『ガッラ・プラキディア』の天井に穿たれた窓がそのひとつ。大理石を薄く削って張ったもので、美しい琥珀色と天然のマーブル模様に目を奪われます。
この小さな窓から差し込む外光は周囲の壁画をも照らし出し、室内は荘厳な雰囲気に。ガラスとは比較にならないほのかな光ではありますが、霊廟としてはむしろふさわしいかもしれません。
5世紀半ばのイタリア・ラヴェンナで建てられた霊廟『ガッラ・プラキディア』の天井に穿たれた窓がそのひとつ。大理石を薄く削って張ったもので、美しい琥珀色と天然のマーブル模様に目を奪われます。
この小さな窓から差し込む外光は周囲の壁画をも照らし出し、室内は荘厳な雰囲気に。ガラスとは比較にならないほのかな光ではありますが、霊廟としてはむしろふさわしいかもしれません。

大阪市立自然史博物館に展示されている窓貝 ©️ Daderot
近代に至っても、ガラス以外の素材を使った窓は存在しました。“貝殻の窓”をご紹介しましょう。
その名もズバリ『窓貝』という貝があります。
牡蠣の一種で、かつて数多く生息していたフィリピンの地域名から『カピス貝』の名でも知られています。この貝の白い殻は加工によって半透明になり、四角く細断して枠に張ると窓をつくることができました。
カピス貝はインドから中国南部、ボルネオ島、フィリピンの島々などアジアの海に広く分布しています。地元の人々は昔から住宅の窓で使っていました。日本と同じ引き戸タイプの窓も多かったようです。
しかしこの窓が広く普及するようになったのは、15~16世紀の大航海時代。スペイン人やポルトガル人による大規模な植民地政策が行われた時期でした。

カピス貝で作られた窓 ©️ Bagoto
当時のヨーロッパではガラスは依然として高価なものだったので、カピス貝の窓を見たポルトガルの航海者は驚き感動したといいます。彼らはそれぞれの入植先で、自分たちの暮らす邸宅や教会の窓にもカピス貝を採用していきました。
当時の代表的な植民貿易地だったインドのゴアやフィリピンのビガンでは今でも、コロニアル様式の住宅や古い教会建築などで立派な『カピスシェル・ウインドウ』を見ることができます。

フィリピンの伝統的な家『バハイ・クボ』では、カピス貝の引き戸が使われることも多かった ©️ SwarmCheng
カピス貝は今でも、主に照明器具や装飾などのインテリア分野で多く使われています。しかしその美しさから乱獲され、場所によっては絶滅が心配される状況も。地球環境に対して私たちが持たねばならない高い意識が、こんなところでも求められています。
“透明なものへの限りない憧れ”こそ、ガラス窓の発展を促す最大の推進力だったのでは…世界中にちらばる“ガラスのない窓の物語”は、そんなイメージを抱かせてくれますね。(了)
透明さへの限りない憧れ ガラスカーテンウォール建築
2025-06-03
[窓]
注目
上から下までガラス張りのビルを見かけることは珍しくありません。都会的で洗練された外観に加え、豊富な窓に囲まれて室内も明るく気持ちよさそう、と思わせますね。
建物の外皮をたくさんのガラスで覆う建築手法は『ガラスカーテンウォール』と呼ばれます。ビルの外側に“カーテンをひくようにガラスで壁をつくる”のです。
長い間、窓は枠にはまって壁に付いているものでした。しかし、透き通ったガラスの特質を活用して建物をより美しくデザインできたら… 人々のそんな想いが積み重なり、新たな技術や工夫が生み出されてきました。
建築デザインでは、やはり建物の顔であるファサード(正面)は重要です。やぼったい窓枠をやめ、すらりとおしゃれなガラスだけで透明感を演出したい! そこで出たのが「建物と窓を分けよう。ゴツい躯体からガラスを解放して、外側に立てて支えればいいじゃないか」というアイディアです。
その手法をいくつかご紹介しましょう。
②ガラス同士をボルトで留める
多くの方が一度は目にされたことがあるだろう、ガラスの隅に丸いポイントがついている方法です。
強化ガラスに直接穴を開けてボルトを通し、複数のガラスを組み合わせて大開口を構成します。低層の建物のほか高層のオフィスビルなどでも採用され、DPG(Dot Point Grazing)構法とも呼ばれます。
③シール接着でフレームレスに
はめこみやボルト留めではなく、シリコン系素材の強力なシーリング剤でガラスと支持材を接着します。
ガラスは前面に出して並べ、その裏側をカーテンウォールのフレームに接着して支えるのです。高いフレームレス性となめらかさが得られるこの方法はSSG(Structural Sealant Glazing)構法とも呼ばれ、世界的に広く用いられています。
ガラスカーテンウォール建築の脇を歩いていて「もし、今ここで地震が起きたら?」と不安になったことはありませんか。大きな揺れでたくさんのガラスが割れ落ちてきたら、本当に怖いですよね。
でも、大丈夫。ガラスカーテンウォールは実は地震に強い構法です。
地震で揺さぶられると、建物は上下左右に変形を強いられます。窓枠がついている壁も当然歪み、部分的に接触することでガラスは割れてしまうのです。
窓枠に納められた四角い窓が地震の力を受けてひし形などに変形する『層間変形(そうかんへんけい)』は、災害時の窓ガラス破壊のもっとも大きな原因です。
とくに高いビルは、地震時の揺れ幅が大きくて大変です。東日本大震災時、新宿の高層ビル群がゆらゆらと揺れているさまをテレビでご覧になった方も少なくないでしょう。
そんな中、一見脆く危なく見えるガラスカーテンウォールがなぜ、地震に強いのでしょうか。
建物と窓が一体化している従来の建物と違い、カーテンウォールのガラスは躯体から独立して外側に張りめぐらされています。もちろん部分的に躯体にくっついてはいますが、それ以外はほぼガラス同士の組み合わせが基本。建物躯体の揺れが伝わりにくいのです。
地震時のこの強さは、阪神淡路大震災や東日本大震災の被害調査でも検証されています。

久光製薬ミュージアム内部。建物を支える躯体の柱からガラスが独立している
ガラスカーテンウォール建築は、外部から見たファサードの魅力もさることながら、室内においても開放性やすぐれた採光性で貢献し、さらには周囲の風景を取り込んで内と外とをつなぎ、空間を拡張してくれます。
透明性に対する人間の限りない憧れが生み出したともいえるガラスカーテンウォール。美しく透き通るだけでなく、その先に見えるものまで私たちに与えてくれる、洗練された窓ガラスの姿のひとつといえるでしょう。(了)

窓外の庭の風景と室内の美術作品が融合する。久光製薬ミュージアム
宇宙エネルギーがやってくる? 我が家の窓でお気軽風水
2025-02-21
[窓]
家づくりやお部屋の模様替えを考えるとき、”風水”や“方位”が気になる方もおられるかもしれません。今回は風水と住まい、とくに窓との関係のお話です。
風水は古代中国で生まれて現代まで受け継がれる思想。占いなどと同一視されることも多く、ご利益や魔除け? 的なものと見られがちですが、もとは宇宙の起源への探究から始まっており、物理や数学の視点も含んでいます。
すべての基本は“エネルギーの流れ”で、これは“気”と言い換えることもできます。常に私たちのまわりにあり、勢いよく進んだりゆるやかに渦巻いたりしているというのです。
うねって流れるこのエネルギーを暮らしや仕事に活かして、より良い人生にしましょう! ざっくりいうと、風水とはこんなスタンス。
“バランスと調和”も重視されます。強すぎず弱すぎず、おだやかな流れこそがベストで、この状態をしつらえるさまざまな知恵が伝えられてきました。
風水師とはそんな知恵や工夫、技術を自在にあやつる人々です。陰陽や方位、八卦(はっけ)といった多くの複雑な要素も含む本格的な風水では、彼らの力が欠かせません。
その一方で、家具の配置など室内を少し変えてエネルギーの流れを整える、手軽な“おうち風水”のような試みもあります。
ここでは心身の健康や仕事など、私たちの日常に良く作用してくれそうな、おうちの窓の風水を、ほんの少しだけご紹介します。
いつもと違う目で住まいを観察し、軽い実験のような感覚でやってみる。いい感じなら成功、ちょっと違うかなと思ったら元に戻せばOK。絶対的な正解も間違いもないのが、風水のいいところでもあります。
窓はおうち風水の大きなポイントのひとつ。なぜなら、エネルギーは「窓やドアなどの開口部から室内を出入りして流れていく」といわれているからです。
この流れを“おだやかに浴びて受け取れる室内”が、良いおうち風水の基本と考えられます。
開口部の配置や数によって、エネルギーは流れ方を変えます。
窓とドアが正対していれば、強くまっすぐ流れるといわれます。けれどそれぞれの位置がずれていたり、数が違ったりといったさまざまな条件によって、曲がったりうねったり渦を巻いたりと、その姿を変化させて室内を通っていくのです。
この部屋はどうかな? 流れを読みときながら、家具の位置を少しだけ移動させたり、インテリアにちょっと新味を加えてみるのが、おうち風水の楽しいところ。
例えば窓とドアがふたつずつあるリビングで、家族がよく座っているソファは、どこにあるとよいのでしょうか。
通常、良いと考えられるのはAです。
左のドアから入るエネルギーは、うねりながら室内を流れて2枚の窓と右のドアから出ていきます。ソファはドアからも窓からも少しずれているのでおだやかに流れを受け取れそう。エネルギーのパワーを弱めるとされる観葉植物も効いています。
一方Bではドアの正面にソファがあり、入ってくるエネルギーの束に直接さらされるので、少しパワーが強すぎるかもしれません。
Cはソファの背後に窓があり、出て行こうとする強めのエネルギーが当たりやすそうです。
でも、うちのリビングにはテーブルもほかの椅子もキャビネットもあるから、家具はそう簡単に動かせないんだけど… そんな状況もきっとありますよね。
大丈夫、家具にさわらずに流れを変えるアイテムもあります。
ドアとソファの間にパーティションやついたてを置くことで、エネルギーの流れは変えられるとされています。またAにも見られるように観葉植物はエネルギーのパワーをおだやかにするといわれ、B-2ではこの手法を取り入れました。
また、C-2のように窓にカーテンをひけば、エネルギーが出入り口として見なさなくなり、右手のドアと窓をめざして流れていきます。
寝室の風水も考えてみましょう。
大切なのはベッドの配置です。ここではAがもっともおだやかにエネルギーを受け取れそう。
また、エネルギーの流れのほかに寝室で大切なのがベッドとドアの関係で、「横になったとき出入口が死角にならないこと」が安心・安全に眠るために不可欠とされています。
その観点で、Bを見てみましょう。
このベッドの配置では、寝ているときにもしも誰かがドアを開けても、その人が完全に室内に入るまで何者なのかわかりません。確かにちょっとこわい気もしますね。
さらにCのように、ドアを開けた瞬間丸見えになるベッドは、エネルギー・安心安全両面でNG。
改善には、例えば就寝時に窓にカーテンをひくほか、ドアとベッドの間にパーティションを置いてみてもいいかもしれません。


風水を試したら、その後の数週間で暮らしの中にどんな出来事や変化があるか注意するのがよい、といわれます。
人間関係が改善されたり、なんとなく体調が良いなど嬉しいことが増えれば、もしかするとそれは風水の恩恵かもしれません。
反対に仕事で思わぬ失敗をしたり、いつもより少し辛い出来事があったなら、家具を元に戻せばよいし、気が向いたら別のしつらえを試してみても。
当然ながら、気にしすぎる必要はありません。
住まいに限らず、普段と違った目線で何かを見ると、そこには必ず新しい発見があります。
いつも光や風を取り込んでくれる我が家の窓が、実は目に見えない宇宙エネルギーの出入り口になっていて、日々の暮らしにひそかに関わっていたりして…?
こんな、少し不思議でファンタジックなワクワク感こそ、おうちの窓風水の醍醐味ではないでしょうか。
参考文献:
ラム・カム・チュアン『風水 原理を生かす』産調出版
リリアン・トゥー『図説 風水大全』東洋書林
リチャード・クレイトモア『風水 気と古代風景学の秘密』創元社


































