二階さちえの「窓のコラム」
熱い日差しは窓の外でシャットアウト! “外部遮蔽”で住まいを涼しく
2024-08-07
カテゴリ:窓
酷暑が続く今年の夏。天気がよくても日中は出歩かず、なるべく家の中で暑さをやり過ごす時間が多いのではないでしょうか。
今回のコラムは少し趣向を変え、窓で暑さに対抗する実用的な知恵をご紹介しましょう。エアコンの上手な使用に加え、“窓の外での効果的な日射遮蔽”が、住まいの省エネと快適さに直結します。
窓リフォームはすぐにはできない ならば日差しを遮ろう
断熱性能を高めたLow-Eガラス(エコガラス)でリフォームし、窓そのものの遮熱力を上げるのは、今や涼しい家と省エネを実現する王道のひとつとなりました。
でも「すぐにリフォームは難しい、とりあえず目の前の暑さをなんとかしないと」 と、カーテンを引いたりホームセンターに走ってシェードやブラインドを手に入れる…そんな対処が、現実には多いのではないでしょうか。
家を暑くする元凶である太陽からの日射熱は、その約7割が窓ガラスを通って室内に入ってきます。エアコンをかけていても窓に日が当たると暑いのはそのせいで、窓辺で熱をしっかり遮ることが涼しさアップには効果的なのです。
ここでは窓そのものはいじらない、手軽・ローコスト・効果あり、の日射遮蔽術を紹介していきます。当然ながらエコガラス窓と組み合わせれば、効果はより一層上がります。
窓の内側と外側、どちらで遮蔽する?
窓辺で日差しを遮るツールは、大きく2種類に分かれます。スダレのように屋外につける方を“外付け組”、ブラインドなど室内で使う“内付け組”とすると、結論からいうと効果の上では“外付け組”に軍配が上がります。
なぜでしょうか?
ポイントは“窓自体を熱くしないこと”です。
じかに日差しが当たるとモノは温度が上がり、蓄熱して周囲にその熱を放射します。輻射(ふくしゃ)熱とも呼ばれる現象です。
内付け組の場合、まず窓ガラスが直射日光日射にさらされて熱くなり、蓄熱します。その輻射熱が今度はカーテンやブラインドに伝わって蓄熱。さらにその輻射熱が部屋の中へ広がる…という塩梅です。
何もしないよりもちろんいいのですが、建物の内と外の境になっているガラス自体が熱くなれば、こんな仕組みで内部は暑くなっていきます。
これを解決するのが外付け組=外部遮蔽です。やってくる日射を家の外で受けとめてブロックし、窓ガラスの温度を上げないバリヤーとして働いてくれます。
スダレや緑のカーテン、おしゃれなオーニングなど、外付け組にはさまざまなアイテムがあります。それぞれの持っている特徴を見てみましょう。
外付け組=外部遮蔽は緑のカーテンがベスト
①オーニング
昨今、ベランダにオーニングやシェードをつけている住宅が増えました。「洋風の家だからスダレはちょっと…」との住まい手の思いもうかがえるよう。
オーニングは豊富なデザインに加え、UVカットなど機能性を高めたものもあり、留め付け方もいろいろで自宅に合わせて選べます。しゃれた屋外空間の演出にも重宝する存在です。
気をつけたいのは、まず蓄熱性。最初に直射日光を受けるのでやはり温度は上がり、輻射熱は窓に至るまでの空間に伝わります。デッキやベランダは窓ガラス~室内までのバッファゾーンと考えてよいかもしれません。
カラーリングで効果が異なる面もあります。こげ茶など濃い色の方がしっかり遮熱してくれますが、室内は暗めになるので、選ぶ際には他の窓や照明など採光面の要素も考え合わせて。
②スダレ・ヨシズ
夏のホームセンター入口に必ず並ぶ、昔ながらの実力派。ヨシや竹など中に空洞のある自然素材の利用が、その効果を担っています。
オーニング同様に直接日射を受けて蓄熱もしますが、空洞の中にある空気が断熱材として働き、裏側の温度は表より低くなります。窓ガラスに伝わる輻射熱も、ここで低減されるのです。
主な材料であるヨシが水生植物であることも強みのひとつ。水をかけても問題ないので、濡らしてやれば気化熱で冷えて蓄熱が減らせます。昔の人の知恵恐るべし、といったところでしょうか。
一方、デザイン的にやはり和風味の強さ? が、現代住宅に取り入れるにはハードルになるかもしれません。風にあおられたり劣化などで、他に比べてこわれやすい点もあります。
③緑のカーテン
学者も認める、現代の外部遮蔽の雄です。
ゴーヤやアサガオなどつる性の植物を窓辺で育ててネットに誘引し、重なり合う葉で窓への直射日光を遮る、見た目にも涼しい工夫です。
日本大学生物資源科学部が行った、窓ガラスへの直射日光をどれだけ遮れるかをヨシズ・寒冷紗(かんれいしゃ)*と比較した実験があります。ここでもゴーヤを使った緑のカーテンがトップの成績をおさめた結果が出ました。
違いは“生きている葉っぱ”にあります。
植物には主に葉の裏に気孔と呼ばれる穴があり、そこから水分を蒸発させて自らの体を冷やしながら、土壌から水を吸い上げる性質があります。
“蒸散”と呼ばれるこの現象によって、強い日射が当たっても葉っぱは蓄熱せず、オーニングのように極端に熱くなりません。周囲に輻射熱を振りまかず、ひたすら日差しだけを遮り続けてくれるのです。
この現象は、公園や街なかでも体験できます。庇や建物の陰よりも公園の木々や街路樹がつくる木陰の方がなんとなく涼しい、と感じたことはありませんか? それは決して気分的なものだけではないのです。
泣きどころは、やはりある程度の時間と手間がかかること。種をまいて一週間後には豊かな葉陰…とはいきません。
初夏に苗を植え、水をやり、実がなることも期待して、楽しみながら育てていきたいものです。
それぞれ一長一短ある外部遮蔽ですが、窓の外側で工夫して直射日光を当てないという基本は同じ。
ご自宅の事情に合わせ、窓辺に合わせて新たな庭木を選びにいくのもよし、家族みんなで独自の遮蔽ツールを考えてDIYでつくってみるのも、夏休みの思い出となるかもしれません。(了)
*寒冷紗:化学繊維や麻などで荒く織られた布で、農作物を覆うことで強い日差しを遮ったり、冬の保温や霜よけなどに利用する。近年では住宅のベランダや庭で、日よけ用に張られることも増えてきた。